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DebianをホストOSにしてKVM/QEMUを使ってゲストWindows11からeTax(法人)ソフトを起動させる
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2025/08/16

弊社の法人の確定申告の季節がやってきました。
通常の企業の確定申告では、会社の経理・会計担当さんが税理士事務所へ依頼するとか、確定申告機能を有する会計ソフトを利用するなどで対応するため、わざわざ
一人会社にとってはこれが大きな関心事で、決算日の後から決算書類の作成〜法人税などの申告・納税まできちんと自分の手で進める必要があります。
最終的にその年の法人税などを納めるわけですが、有料の確定申告代行サービスを利用しないのであれば、納税手段は以下の2つに絞られます。
直接最寄りの税務署へ書類を提出する 『e-Taxソフト(ダウンロード版)』を使って電子申告
近年、コロナ禍もあり、1の選択肢は少し気を遣う傾向もあり、2の方法を使う方も多いと思います。
ただし、会社で「Windows」を一切使わないような場合、『e-Taxソフト(ダウンロード版)』の利用はかなりハードルが高いものになります。

これはMacユーザーにも当てはまるのですが、わざわざ年1回のイベントのためだけにWindowsパソコンを購入を検討するのはあまりに経費がもったいないことです。
ということで、今回の話は、「Debian(Linux)でe-Taxソフト(ダウンロード版)」を動かすまでの手順をまとめています。
なお、Windowsへe-Taxソフトをインストールする手順は別の記事にまとめているので、必要であればそちらを参考にしてください。
Linuxでのe-Taxの利用は「KVM/QEMU」を使おう
このブログでも度々紹介していますが、LinuxでWindowsアプリを動かす定番となっているのが
結論からいうと、Wineでもe-Taxソフトの本体は動くのですが、e-Taxソフトの仕様である「ライブラリーを追加でインストールする」機能が失敗するため、現状は使い物になりません。
そのため、ハードウェアリソースをかなり割くことになるのであまり使う気はしなかったのですが、Linux上で仮想化したWindowsを動かして、そちらでe-Taxソフトが動くかどうか試します。
KVM(Kernel-based Virtual Machine)
OS仮想化のソフトは、Linuxのみならず使える
VirtualBox
KVMとは、主にLinux環境で使われるオープンソースの仮想化技術です。 商用製品(VMware ESXi, Hyper-Vなど)とも十分に競合できる性能・機能を持っています。
KVM単体でみると、以下のような特徴があります。
KVM : Linuxカーネルに組み込まれた仮想化拡張機能を利用するカーネルモジュール。Intel VT-xやAMD-V等のCPUによるハードウェア仮想化支援機能を活用している 特徴 Linuxカーネル自体がタイプ1ハイパーバイザーとして機能するため、高速な仮想化が可能 仮想CPUの提供や高速なメモリ管理 ライブマイグレーションや柔軟なネットワーク仮想化等、エンタープライズ用途でも十分な機能・性能
メリット 高速動作(仮想CPUやメモリ管理をカーネルが直接担当) 無料、オープンソース セキュリティ機能との連携 拡張性・スケーラビリティが高い
また、セットとして利用するQEMU(Quick Emulator)に関しては、
QEMU : 汎用的なオープンソースのマシンエミュレータです。仮想マシン内の仮想ハードウェア(ネットワーク、ディスク、グラフィック等)のエミュレーションを担当します。 特徴 単体でも仮想化は可能だが、ソフトウェアエミュレーションのみの場合は動作が遅い KVMと組み合わせることでCPU・メモリ部分はハードウェア仮想化となり高速化 x86以外にもARMやPowerPCなど多様なアーキテクチャも仮想化出来る
主な用途 ゲストOSの種類やアーキテクチャを問わず柔軟に仮想化 KVMが非対応の環境でもエミュレーションによる仮想化実現が可能
ということで、これら2つを組み合わせる(KVM/QEMU)ことにより、
QEMUが仮想マシン全体のエミュレーション・管理を行い、CPUとメモリ操作はKVMに処理を委譲する形で高速化 仮想CPU(KVM)、メモリや仮想I/O(QEMU)と役割分担することで、効率良く動作する仮想化基盤が構築可能 管理や自動化にはlibvirtやvirt-manager等のツールが併用可能
ということで、KVM/QEMUは、高速かつ安全な仮想化基盤としてLinuxサーバ・クラウドの標準技術で、オープンソースでコストもかからず、様々なOSの仮想化やスナップショット、ライブマイグレーションなどの高度な機能も備えています。
表でまとめておくと、
というようになります。
KVM/QEMUでWindows11を動かす
KVMマネージャーのインストール
DebianでKVM/QEMUを最小限で動かすためには以下をパッケージインストールします。
$ sudo apt -y install virt-manager qemu-system
ちなみに、Windows11を動かす場合に、以下のパッケージも必要となります。
$ sudo apt -y install ovmf swtpm swtpm-tools
では早速KVMマネージャーを起動してみましょう。
$ sudo virt-manager

問題なく起動できていたらOKです。
次にWindows11をKVM上にデプロイさせてみます。
Windows11のイメージファイルは評価用の無償版がMicrosoftから公開されているものを利用します。
なお、無償版ですので、利用の際にはMSアカウントが事前登録が必要です。
Windows11イメージから仮想マシンを作成
以下のリンク先からWindows11のISOイメージファイルを探してダウンロードしましょう。

保存先としてはPC内の任意の場所で良いのですが、外付けのUBBドライブだったり、ブートローダーが自動では認識しないようなところは避けましょう。
また、保存したISOファイルから仮想マシンが作成される仕様になっているので、一旦仮想マシンを作成してしまうと、その場所から参照中のISOファイルを削除するとエラーになります。 そのため、tmpやcache、downloadといった一時ファイル置き場には置かないほうが良いでしょう。
ではまずvirt-managerを起動して、KVMマネージャーから新しい仮想マシンをクリックします。
sudo virt-manager
ローカルのインストールメディア

参照


ここでの注意は外付けのリムーバブルディスクにISOファイルを保存してそれを参照してしまうと、色々と問題が起こってしまうことがあります。

ちゃんとKVMがブート可能な場所を選択することが重要です。
次に仮想マシンに割り振るリソースの設定ですが、e-Tax自体は処理にさほど負荷がないので、軽めに設定しておきます。 例えば、以下のような感じです。
メモリサイズ : 4096MB vCPU : 2 ディスクサイズ : 20GB インストール前に設定をカスタマイズする : チェックする
さらにカスタマイズ設定で、
[概要] > [Firmware]
UEFI x86_64:/usr/share/OVMF/OVMF_CODE_4M.ms.fd

設定を反映させるために
適用
しばらく待つと仮想マシンが作成されます。

VMの起動〜Windowsのインストール
先程作成されたVMを起動してみましょう。
無事、Windowsイメージが読み込まれた場合、Windowsのセットアップ画面に移行するはずです。

もしかしたら、以下のメッセージで、VMの起動が失敗するかもしれません。
Network ‘default’ is not active
このエラーが出ると、一旦VMマネージャーを閉じて、以下のコマンドを叩きます。
udo virsh net-autostart default
ともあれWindows11のインストールを進めていきます。

既にWindowsプロダクトキーをお持ちの場合にはここでプロダクトキーを入力できますが、そうでない無償版のみを利用したい方は、ご自身のMSアカウント情報を入力することになります。

すべてを入力し終えると、ようやくインストールが始まります。

遅いホストマシーンだと、インストール完了まで
仮想化は、ここらへんのセットアップでかなり時間が取られるのが難点ですが、気長に待つしか方法がありません...
ようやくインストールが終わると、初回設定の画面が現れます。

さて、著者的にWindowsも久しぶりなので、パスワードではなく
PINコード

このPINコードは英字記号含めた
そして...ようやくWindow11がVMで立ちあがったのでした。

Windows11(仮想マシン)でe-Taxを動かす
ようやく本題で、e-Taxソフト(ダウンロード版)の動作確認を行います。
インストールの詳しい手順は以下の記事に委ねます。
インストーラーも正常です。

e-Taxソフトのトップ画面も問題なく開けます。

もちろん、ライブラリーの追加で、各種書類フォーマットが読み込めることも確認できました。

色々と動作を見た結果、十分動いてるように思います。 (※カードリーダーの動作は未確認です)
まとめ
以上、今回はLinuxでどうしてもe-Taxソフト(ダウンロード版)が使いたいという一人会社で奮闘中の社長さんのために書かせていただいた内容になっています。
まとめると、
Linuxでも仮想化を使えばWindows11は動作可能 Windows11の評価版でもe-Taxソフト程度なら十分使える とはいえトラブル時に多少はLinuxのコマンド操作やデバイスなどの知識が必要
ということが分かりました。
記事を書いた人
ナンデモ系エンジニア
主にAngularでフロントエンド開発することが多いです。 開発環境はLinuxメインで進めているので、シェルコマンドも多用しております。 コツコツとプログラミングするのが好きな人間です。
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